水路紀行

隠された水路の魅力を発掘していきます。

小規模水域の重要性

Hydrobiologiaで、小規模水域の特集が組まれています。小規模水域として、湧水、河川の源流部、ため池、水路等が注目されています。

 

Hydrobiologia, Volume 793, Issue 1 - Springer

 

水路を含む小規模水域がこれまで注目されてこなかった経緯についても触れられています。

 

>However, small water bodies in Europe and other regions have still received relatively little research attention. This may in part relate to the fact that they do not strictly fall within the monitoring requirements of the Water Framework Directive and other similar legislation.(Preface: The importance of small water bodies | SpringerLink

 

特集全体にわたって、水路についてはあまり突っ込んだ議論はなさそうです。でも、水路も小規模水域の一つとして認識されているので、今後、水路生物研究が国際的にますます注目されていく兆しを感じます。

大晦日の魚採り

時間ができたので今日も水路に魚採りに行きました。今日の狙いはホトケドジョウです。見た目がとても可愛い魚で、初めて見たときはうっとりしました(笑)

 

ホトケがいそうな谷津に向かいました。谷津とは、低地にある谷状地形のことです。平地と扇状地が接する辺りにあります。

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全体的に傾斜が急です。上にため池があり、そこから水を取って水路に流し、途中の水田に給水しています。傾斜がきつい証拠に、上下の水田間に落差があります。

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水路も傾斜がきつく、段差が見られます。段差をつけることによって水路の勾配を緩やかにし、流速が速くなりすぎるのを防ぎます。下の写真の落差は特にひどいと思います。これでは下流から全く魚が遡上できません。

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このように地形に着目すると、水路のことが理解しやすくなります。

 

この谷津周辺の水路で魚を採ってみました。

 

カワヨシノボリ。河川の上流~中流域の普通種です。でも、この辺りではなぜか分布が狭いので貴重です。この写真では見づらいですが、2つの胸鰭がくっついて1枚の吸盤になっています。この吸盤を使ってヨシ(植物)を上ることがあるので、ヨシノボリという名前が付いたのだとか。ハゼの仲間の多くは、同様の吸盤を持っています。

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カワムツです。これも河川上流~中流域の普通種です。

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外来種ブルーギルです。ため池等の、流れが緩やかな水域に好んで生息します。谷津のため池に潜んでいることが多いので、そこから水路に流されてきたのだと推察されます。

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谷津の端にはこんな水路もありました。スジエビとヤゴ(アカネの仲間っぽいやつ)、アメリカザリガニはいましたが魚は採れませんでした。ここならホトケドジョウも・・と思って頑張りましたが、見つかりませんでした。両生類目当てでまた来たいです。

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その谷津からさらに山手へ向かったのですが、細い道に入ったところでこんな看板がありました。おっかない。谷津ではよく、ヘビとクマの恐怖にさらされます。

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そこからしばらく山沿いに行くと別の水路がありました。そこではドジョウが採れました。底につもった落ち葉の中にたくさんいました。

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しかし、ホトケドジョウは採れず・・

残念でしたがここで時間がきました。

 

今年最後にホトケドジョウに会いたかったのですが、普通種ばかりでした。あと、外来種も・・。普通種が水路改修や外来種に負けず、しぶとく生き残っているのが嬉しいです。

年末の水路めぐり

午前中は雪が降っていましたが、午後から天気が回復したので、普段行かない水路を見に行きました。撮影用のケースを持っていかなかったのでいい写真はありませんが、紹介します。

 

石川県南部の、海に近い地域です。この時期らしく、大河川には多数の水鳥が浮かんでました。僕は詳しくないけど、色々な種が混じってるのかな!?

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まずは、今年の夏に見つけた良さそうな小水路に行きました。幅は1mもありません。夏に来たときは、上からのぞいたら小魚が群れていたのですが、今日はパッと見、何も見えませんでした。

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殻が目に付いたので拾ってみると、ドブガイ類でした。ここの地域のドブガイ類は、タガイのようなやつもヌマガイのようなやつもいて、同定の断言は避けたいと思います。

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殻を拾うために底質をさらうと、中にキタノメダカがいました。ドジョウみたいに潜ってるのですね。

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枯れた水草の塊りをすくってみると、タモロコも採れました。一すくいでこの数はなかなかです。かたまって泳いでいる冬らしい出来事。ウシガエルの親子も採れました(写真中央のやや左下にオタマジャクシの頭だけ見えています)。

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次に、すぐ近くにあった大きめの水路に移動しました。さっきの水路と道路をはさんだ向こうです。水深も30cm以上あって底には沈水植物が繁茂していて、良さそうな水路です。

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こんな素敵な桝(ます)もあります。まずは桝から網を入れてみます。

 

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やっぱりキタノメダカばかり採れます。また「来たの?メダカ」って感じです(?)

 

ここではやたらギンヤンマのヤゴが採れました。

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1個体だけ、マルタニシも採れました。この地域にはよくいます。

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しばらく採集を続けると、魚が続々と採れてきました。

 

外来種のタイリクバラタナゴ。このあたりのドブガイ類を占拠してるのでしょうか!?この地域でタナゴ類が採れたら、たいていはこの種です。もしや、在来種がタイリクバラタナゴに駆逐されたのではないかと怖くなります。写真悪くてごめんなさい。

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ドジョウ。

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フナ類。僕には同定できません。ただ、この地域にはどうも、ギンブナもナガブナもいそうです。今日のはギンぽい。

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目立った生物は以上です。魚は5種が採集され、いずれもこの地域の普通種です。この地域はどこで採集しても、この5種にナマズが加わる程度なので、魚取りの面白みにやや欠けます。普通種が普通に残っているのは、とても大切なことなのですが・・。近くの大河川にミナミアカヒレタビラやカマキリ等の魚がいるので、そういうのが生息している水路はないか探しています。

 

最後に、今日採捕された魚はすべて、生かしたまま元の水路に逃がしました。

石川県の水路の紹介(1)

先日ふらっと立ち寄った水路を紹介します。

石川県南部の水田地帯の水路です。

 

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これは、ここの水路水系の幹線水路です。1km程下流で大きな河川に流入します。水深は5~15cm程、流れが緩やかで砂泥が堆積しています。

 

水路の水面と隣接道路との差(水路壁面の高さ)は2m程もあります。人が水路に降りるには高すぎます。写真のように右岸の一部には柵がしてあります。水路に降りるための階段などはありません(ちなみに僕は、下に紹介する小水路を通って降りました)。親水性(水路の利用のしやすさ)という観点からは、全然評価できない水路です。昔ながらの水利用文化があまり継承されていなかったり、「環境」にたいする意識が薄い地域では、このような親水性の低い水路が多いようです。

 

次に、この水路に流入している排水路を見てみます。

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幹線水路と小排水路との間には、50cm程の落差があります。幹線水路から小水路に魚が移動することが出来なくなっています。小水路やそれに続く水田は、魚の産卵場所などとして貴重です。ここの水路の造りは、「生物」や「環境」、「生物多様性」といった観点からも評価することが出来ません。

 

それでは、どのような生物が生息しているのでしょうか?

タモ網を使って生物を採集しました。

 

魚は、タモロコとドジョウが採れました。

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ドジョウの写真です。5分に1尾程のペースで採れました。

ここのドジョウ。とても気になります。どの個体も写真のように、ヒゲが長くて尾柄が高いです。これはもしかして、外来種のカラドジョウではないでしょうか?カラドジョウは在来種のドジョウと大変似ています。見た目で区別するのはかなり難しいです。

 

カラドジョウのように在来種と区別しにくい外来種は、あまり気付かれずに分布を拡大していく可能性があります。駆除しようと思っても、在来種と区別しにくいのでやりにくいです。

 

最後に水路の底を手で探ってみました。

 

すると・・

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ドブガイ類がたくさん採れました。3分足らずでこれだけ採れました。これだけドブガイ類の密度が高い水路は珍しいです。ドブガイ類には見た目がよく似たヌマガイとタガイの2種がいます。これはどっちかな・・あまり自信がありませんが、どちらもいるような気がします。どちらにしろ、ここは希少な貝の生息地として重要です。

 

どうしてここにはこんなに沢山のドブガイがいるのでしょうか?これを解くには、水路の局所的環境だけではなく、この場所の「水のネットワークのつながり」を解明する必要があります。もし新しいことが分かったらまた報告します。

 

 

水路 現代に息づく「いのち」の小川

田んぼの脇を流れる細い水路

 

昔ながらの集落に残る何気ない水路

 

新しい住宅の裏に隠れた水路

 

そんな水路たちを発見し、発信していきます。

 

水路に生息する生き物たち、水路を取り巻く社会・文化、昔からある水路の「今」・・多角的に水路を掘り下げていきたいと思っています。